成田空港を応援したい。

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空港での搭乗支援設備にはこんなものがあります(バニラエアのニュースを受けて)

奄美空港でのバニラエアのニュース

www.asahi.com

朝日新聞が昨日出したこの記事。賛否両論あるが、私は「空港及び航空会社側が設備を用意していなかったのが完全に悪い」というスタンスだ。

事前に申し出ずに空港に来て搭乗を求めた乗客が悪いというコメントも散見されるが、それでは「緊急を要するやむを得ない事情」で急遽旅行が必要となったときに対応できないではないか?

タラップを利用できない乗客のための設備

搭乗橋(Passenger Boarding Bridge:PBB)で直接ターミナルビルから飛行機に乗れるスポットではなく、オープンスポット(PBBが設置されていない駐機場)に飛行機が駐機された場合、タラップを利用できない旅客はどうやって搭乗すると思いますか?

 

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お知らせ|リムジンバスの東京空港交通

PBL(パッセンジャーボーディングリフト)という車両がその答えのひとつだ。車後部が飛行機と同じ高さまで上昇することにより直接飛行機に搭乗できる。

成田や羽田のような大きな空港では、空港内のランプバスを運行する会社がPBLも所有しており、航空会社は必要なときにバス会社に連絡してPBLを利用するようになっている。

奄美空港ではバニラエアはPBBを利用できないのか?

一方で奄美空港にはPBLが配備されていないらしい。

だがこちらの記事を見ると分かる通り、奄美空港にはPBBが1本設置されている。バニラエアは車椅子の乗客が搭乗することが分かった場合に、同時間帯にPBBを使用する他社と調整して関西便をこのゲートにアサインすればよかったのだ。

奄美空港の時刻表を見てみると、JALの羽田便が14:40着/15:40発で運航されている。バニラエアの関西便は14:00着/14:40発だから、後から奄美に乗り入れたバニラエアは日常的にPBBを使えないと思われる。

「14:40にバニラが出ればJALが14:40に来て使えるじゃないか」と思う方もいるかもしれないが、航空便の早着、遅発などは日常茶飯事であるため、「便の間隔が0分」では自社の前にバニラが使うなど絶対にJALが首を縦に振ることはないと思う。*1

航空会社は搭乗に際してお手伝いが必要な乗客に「事前の申告」を呼びかけているのはこういった事情もあったりする。事前に申し出があれば、「車椅子旅客がいるからこの便はどうしてもPBBを使わせてくれ」と他社に調整をかけることもできるし、PBLを手配することもできる。

バニラエアは就航の段階で何らかの設備を導入すべき

ただそれでも、バニラエアが設備を導入しなくていいという言い訳には決してならない。今回の一件の後で、バニラエアは座って運ぶアシストストレッチャーを導入したようだが、本来であれば奄美に就航を決めた段階で、タラップを利用することが想定されるわけだからストレッチャーを配備しておくべきだったと思う。

全文表示 | バニラ・エアで車いす客のトラブル 乗降のあり方巡ってネットで論議に : J-CASTニュース

今日からは階段昇降機も利用可能になったとのこと。

このように騒ぎになってから慌てて導入するのではなく、事前に用意しておいてしかるべきではないだろうか?もしくは、奄美に就航している他社の設備を借りられるような協定などを結んでおくとか。

 

JAL - 空港での備品・設備(JALプライオリティ・ゲストサポート)

JALのサイトには他にもいろいろな設備が紹介されている。

その他の搭乗支援

ボーディングスロープ

今回の木島さんのサイトにも紹介されているが、支援設備としては乗降用のスロープというのもある。

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コミューター・エプロンルーフより

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こちらは私がハワイ島のコナ空港で利用したもの。車椅子の方が利用するには少し傾斜がきついかもしれないが、それでも階段よりは遥かにマシである。

この上の写真の飛行機はB717であるが、それよりも小さい、いわゆるリージョナル機の場合はどうだろうか?

座席数が50機を下回る小型機は一般的にドアの内側に階段がついており、そのドアが外側に開くことで飛行機に直接搭乗するようになっている。

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特注ストレッチャーとおむつ台備え離島飛ぶ 写真特集・JAC ATR42初号機

このような超小形機にはPBBが物理的につけられないため、車椅子の乗客は乗り込むときに同行者やスタッフの支援が必要となっていた。

最近ではこのような飛行機を運航する会社が「ボーディングスロープ」を導入することが増えている。

特注ストレッチャーとおむつ台備え離島飛ぶ 写真特集・JAC ATR42初号機

PBS/PBLの運用について|ORCオリエンタルエアブリッジ

JACでは鹿児島を始めとした乗り入れ空港に、ORCも長崎・壱岐・対馬の各空港にスロープが導入されているようだ。

PBBアダプター

ANAでは、リージョナル機をPBBにつけるための「アダプター」を配備している空港もある。

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雨に濡れない「PBBアダプター」ANA、プロペラ機Q400でも搭乗橋

こちらの記事によると、PBBと機体との間には数段の階段があるが、車椅子の旅客が利用するときにはその階段を外すことでリフトとしても使用できるとのこと。

国土交通省からも取り組みが評価されて表彰された。

バリアフリー:全日本空輸株式会社・ANA ウイングス株式会社 「プロペラ機への搭乗アダプターの開発等、空港・機内・搭乗時の各シーンにおけるバリアフリー化」 - 国土交通省

エスカレーター

他には、もしかするとまだ皆さんの記憶にも新しいかもしれないが、こんなのもあった。

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https://mainichi.jp/articles/20170313/k00/00m/040/027000c

サウジアラビア国王が来日したときに使用して話題になったエスカレータータラップ。さすがお金持ち国家。

海外にはこんな車両も

海外にはこんなのもある。

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Mobile lounge - Wikipedia

http://www.virtualtravelog.net/wp/wp-content/gallery/vt-import/2003-02-PlaneMate.jpg

Virtual Travelog | The Mobile Lounges at Dulles International Airport

 

これは「Mobile-lounge(モービルラウンジ/モバイルラウンジ)」「Plane-Mate(プレーンメイト)」と呼ばれ、ワシントンDCにあるワシントンダレス国際空港を始めとしたいくつかの空港で実際に使われていた車両である。正確に言うと、ダレス国際空港では現在もターミナル・コンコース間の移動を中心に使われているようだ。

上の各サイトの情報を総合すると、

  • モバイルラウンジ、プレーンメイトによって乗客は直接飛行機に搭乗できる
  • ターミナルビルはコンパクトで、乗客はほとんど歩く必要がない
  • モバイルラウンジには102人乗ることができ、71人は椅子に座れる
  • 車内にはバーカウンターがあり、機側まで運ばれるほんの束の間、カクテルなどを楽しめる

という、なかなか面白いシステムだ。これもある意味乗客の搭乗支援のための設備と呼べるかもしれない。 

これはワシントンダレス国際空港を設計したEero Saarinenという人物によって考案された。彼は乗客に長い距離を歩かせず、悪天候や騒音から乗客を守るこのシステムをとても気に入っていたようだが、結局はコストやらターミナル拡張計画やらによって、このシステムは航空機への搭乗という役目を終えることになった。

空港として免税店や物販店などの非航空収入を増やすためにはターミナルビルの床面積を増やさなければならないし、どんどん航空便数が増える中で乗客の輸送を全てモバイルラウンジに頼っていてはコストがかかりすぎてしまうからだ。

現在のダレス国際空港は、メインターミナルとA〜Dまでの4つのコンコース(搭乗橋を備えたターミナルビル)に分かれており、それぞれをエアロトレインが結んでいる。

http://www.mwaa.com/gallery/Dulles_Transist-Map_2010_sm.jpg

メインターミナル・Bコンコース間は動く歩道により、メインターミナル・A・D間はそれぞれモバイルラウンジによる輸送も行われているようだ。

成田空港での現状

現在成田空港では、国際線の運航に関してPBBを利用できる割合は90%以上が確保されているようだ。*2

これはIATAの基準で90%以上が推奨されているため、航空機の発着回数に合わせて施設が整備されているからだ。また、成田空港の発着回数も、そういった施設面での制約によって決まっている。

ただ逆に言えば、5〜10%の便数はバス移動ということになり、ほとんどがバス搭乗の国内線も含めると毎日かなりの数のお客さんがイライラしている可能性もある。

成田では乗客を運ぶリムジンバスの定員は1台約60人のため、例えば240人乗れるB787-8が満席だった場合、バスが4台も飛行機のそばで待機することになる。当然その分空港内の交通量も増えるし、バス会社もたくさん運転手を確保しなくてはいけない。

 

私個人としては「バスゲートは出国審査から近くてあまり歩かなくてすむし、バス搭乗だと飛行機を間近に見れて嬉しい」「帰りも飛行機からバスでターミナルの中心まで運んでくれるしありがたい」のだが、主に足が不自由な方だったり、車椅子を利用している方にとってはそうもいかない。 

PBBを利用するためだけの建物

ターミナルビルの拡張スペースがなかったり、物理的な制約でPBBを備えたスポットがこれ以上整備することが難しいという状況になった場合の解決はどうしたらいいだろう?

ロサンゼルス国際空港には、Remote west gateという乗客が飛行機に乗り込むための建物が整備されている。

http://imgproc.airliners.net/photos/airliners/0/6/4/2239460-v20-12.jpg

LAX remote west gates - Airliners.netより

こちらのブログでも紹介されている。
View from the tower: The Remote Gates

乗客は連節バスにより一度にこのRemote Gateまで運ばれ、PBBを使って搭乗することになる。上の写真では大韓航空のA380が写っているが、既存のターミナルビルでは適合しない超大型機の利用などに有効だ。

 

成田でも、今後整備されるスポットには将来的にこのような設備が作られるかもしれない。すべての人がもっと気軽に飛行機を利用できるような社会になっていくことを望みます。

成田空港の将来像が少し見える、新しい施設計画について - 成田空港を応援したい。

*1:個人的な感覚では15分はほしいところ。しかもJALの後にバニラなら、JAL的には「バニラさんが待つ覚悟ならいいですよ」となるかもしれないが、JALの前にバニラのため「バニラが少しでも遅れれば自社の便がPBBを使えない、それでは困る」とJALが考えるのも当然だと思う。では日によって交互に使えばいいじゃないかと思うかもしれないが、先に運航している者が圧倒的に強いのが航空業界の悪いところでもある

*2:http://www.mlit.go.jp/common/001047128.pdf P.50